みんなの思い出の音楽

Music Lovers 

🇺🇲 ボブ・ディラン語録〜 「俺はプロテストシンガーじゃない」——Bob Dylanが語った、言葉と沈黙の哲学

 

 

記者が尋ねた。「あなたの曲は何について書かれているんですか?」

 

 

Dylanは少し間を置いて答えた——「ある曲は4分くらい、ある曲は5分くらい、そして信じられないかもしれないけど、11分か12分くらいのもある(Some are about four minutes; some are about five, and some, believe it or not, are about eleven or twelve)」

 

 

これは1965年のPlayboyのインタビューでの発言だ。まじめな顔で、まじめな声で言ったらしい。記者がどんな顔をしたか、想像するだけで面白い。

 

 

Bob Dylanという人は、ずっとこういう人だった。答えてくれているようで、何も答えていない。煙に巻いているようで、実は本質を突いている。そのあたりの加減が、60年以上経った今でも、彼の言葉を読む楽しさになっている。

 

 

 

🎸 「俺は一度もプロテストソングを書いたことがない」——時代の代弁者を拒んだ男

 

 

1960年代初頭、Bob Dylanは「時代の声」と呼ばれた。

 

「Blowin' in the Wind」「Masters of War」「The Times They Are A-Changin'」——公民権運動、ベトナム戦争への反対、格差社会への怒り。若い世代が求めていた言葉を、Dylanは次々と書き、歌った。

 

しかし本人はこう言い続けた——「俺は一度もプロテストソングを書いたことがない(I've never written a political song)」

 

そして「曲は世界を救えない。俺はそういう段階はとっくに終わった(Songs can't save the world. I've gone through all that)」とも。

 

さらにこんな発言もある。「俺はみんなを代弁している。俺は世代のスポークスマンだ(I'm speaking for all of us. I'm the spokesman for a generation)」——これを言った直後に、「どうしてそんなことが言えるんですか?」と問われ、こう返した。「今日は俺の気分がそうだから(That's my feeling today)」。

 

矛盾しているようで、矛盾していない。Dylanにとって、「代弁者」というラベルも、「プロテストシンガー」というラベルも、どちらも自分を縮小するものだった。彼はただ、自分の見たものを書いていた。

 

 

🌫️ 「俺は自分が誰かわからない。でもそれでいい」——自己定義を拒んだ哲学

 

Bob Dylanの語録の中で、最も深くて面白い言葉の一つがこれだ。

 

「俺は一日の中で変わっていく。起きたとき俺は一人の人間で、寝るとき俺は確実に別の人間だ。ほとんどの時間、自分が誰なのかわからない。それは俺にとって重要ですらない(I change during the course of a day. I wake and I'm one person, and when I go to sleep I know for certain I'm somebody else. I don't know who I am most of the time. It doesn't even matter to me)」

 

Dylanはこの「自分が誰かわからない」という状態を、弱さではなく、むしろ創作の源として語っている。「俺は矛盾している、自分自身に対してさえも(I'm inconsistent, even to myself)」。

 

これは哲学的なポーズではなく、実際の体験の描写だと思う。60年以上にわたって「次のDylanはどんな音楽をやるのか」と世間が期待するたびに、Dylanは全く違うことをやってきた。フォークからロック、カントリー、ゴスペル、クロスオーバー。その変化は「戦略」ではなく「本人が実際に変わり続けている」からだったのではないか。

 

そしてこの言葉も残っている——「自分がどんな人間かを腹の底で感じて、それを力強く追いかけていく——引かず、諦めない——そうすれば、多くの人を困惑させることになるだろう(When you feel in your gut what you are and then dynamically pursue it, don't back down and don't give up, then you're going to mystify a lot of folks)」

 

 

🖊️ 「あの初期の曲は魔法のように書かれた」——創作についての驚くべき告白

 

2004年、60 Minutesのインタビューで、記者のEd Bradleyが尋ねた。「自分が書いたものを振り返って、驚くことはありますか?」

 

Dylanはこう答えた——「以前はそうだった。今はしない。あの初期の曲をどうやって書いたのか、俺にはわからない。あの初期の曲は、ほとんど魔法のように書かれた(Those early songs were almost magically written)」

 

1964年の「It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding)」などの曲を思い浮かべながら言ったこの発言は、後に何度も引用されている。「今の俺には書けない。どうやって書いたのかわからない」——これが彼の正直な言葉だ。

 

It’s Alright, Ma (I’m Only Bleeding)   

 

この曲は、旧約聖書の一節も取り入れられてる様でもあるが、私は今だに歌詞が難解で、

よく理解でき無い。

 

しかし、心に残る一節がある、

" You lose yourself, you reappear

 

自分を見失い、ふたたび見つけ

 

You suddenly find you got nothing to fear

 

突然、怖いものなどないと気づく

 

Alone you stand with nobody near

 

きみはひとり、誰ひとり近くにはいない "

 

 

🎵

作曲については、1975年のインタビューでこうも語っている——「俺は早く書く。インスピレーションは長続きしない。曲を書くことで頭がおかしくなりそうなときがある。頭の中が詰まりすぎて、自分のベストな曲だと思うものをたくさん失くしてしまう。テープレコーダーを持ち歩かないから(I write fast. The inspiration doesn't last. Writing a song, it can drive you crazy. My head is so crammed full of things I tend to lose a lot of what I think are my best songs, and I don't carry around a tape recorder)」

 

「俺にはわからない、でも確かに存在した」——Dylanが自分の創作について語るとき、いつもこの謙虚さと驚きがある。

 

 

🎯 「芸術の目的は、時間を止めることだ」——Dylanが残した最も詩的な言葉

 

Bob Dylanは言葉の人間だが、自分の言葉の意味を説明することをほとんど拒んだ。しかし時々、鎧の隙間から本音が見える言葉を残している。

 

「芸術の目的は、時間を止めることだ(The purpose of art is to stop time)」

 

これはシンプルに見えて、深い。Dylanが60年間やり続けてきたことの答えが、ここにある。

 

「美しいものの裏には、何らかの痛みがある(Behind every beautiful thing, there's some kind of pain)」——自伝『Chronicles, Volume One』の中の言葉。

 

「記憶を持ち続けたいなら、まずそれを生きなければならない(If you want to keep your memories, you first have to live them)」

 

「批判できないものを批判するな(Don't criticize what you can't understand)」——これは1964年の曲「The Times They Are A-Changin'」の歌詞でもある。

 

そして最後に、1966年のSaturday Evening Post誌でのこの言葉——「俺は腐る前に死ぬ。腐るのは、何かが生きることをやめたのに、まだ死んでいない状態だ。腐敗は俺をオフにする(I'll die first before I decay. Decay is when something has stopped living but hasn't died yet)」

 

この言葉を言った20代の男が、80代になった今もステージに立ち続けている。腐ることを拒んだ男は、本当に腐らなかった。

 

---

 

「あなたの曲は何分ですか」と聞かれた男が、60年間、世界中の人間に「これは俺の曲だ」と思わせてきた。

 

「自分が誰かわからない」と言いながら、誰よりも強い個性を持ち続けた。

 

Bob Dylanの語録は、答えてくれているようで、何も答えていない。でもそれを読んでいると、なぜかこちらが「答えを探す必要はないんだな」という気持ちになってくる。それが彼の言葉の力だと思う。

 

 

 

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