fusion , rock rock

🇺🇲 ポーカロ兄弟の長男が遺したもの——「Africa」というドラムの教科書🥁

 

1982  ,  TOTO IV ~聖なる剣 - TOTO , 

 

Songwriter : David Paich  ,  Jeff Porcaro , 

 

 

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1982年。スタジオに集まったToto のメンバーたちは、ある曲を「捨て曲」だと思っていた。

 

ギタリストのSteve Lukatherは後にこう語っている。「正直言うと、これは俺たちのバンドの中で一番『Totoらしくない』曲だった。でも、世間はみんな、これが俺たちの代表作だと思っている」。さらに彼はこう続けた。「歌詞を聞かないまま、レコード全体を作り終えていた。最後にリードボーカルを乗せただけだったんだ」。

 

 

その「捨て曲」が、1983年にBillboard Hot 100で全米1位を獲得し、全世界で15億回以上ストリーミングされ、2022年にはSpotifyで単曲10億回再生を突破した。リリースから40年以上が経った今もTikTokで使われ続け、ミームとしても「インターネットが最も愛した曲」と呼ばれるまでになった。

 

 

その中心にいたのが、バンドの創設者であり、Jeff・Steve・Mikeという3兄弟の長男、Jeff Porcaroのドラミングだった。

 

 

🥁 「叩かない」という選択をした、史上最高のドラマー

 

 

「Africa」のドラムパートを楽譜にすると、ドラマーたちはまず驚く。「拍子が複雑なわけでも、手数が多いわけでもない。なのに、なぜこんなに気持ちいいのか」と。

 

 

実際、Jeffのバスドラムパターンは極めてシンプルな**四分音符**で構成されている。ドラム専門誌の解説によれば、Jeffは「複雑なフィルを避け、シンプルなバスドラムパートを選んだ」ことで、曲全体に「揺るがない安定感」を与えている。複雑なことをしないという判断こそが、彼の音楽的な成熟を物語っている。

 

 

なぜそれが「すごい」のか。理由は、この四分音符の安定感があるからこそ、上に乗るパーカッション、シェイカー、コンガ、そしてマリンバのイントロが、自由に呼吸できるということだ。Jeffが土台で「動かない」からこそ、楽曲全体が浮き上がる。

 

 

ドラム講師のMike Michalkowはこの曲のフィルを教える動画の中で、「派手なフィルとは違う、スペース(間)の使い方が本当に美しい」と語っている。叩く音と同じくらい、**叩かない瞬間**が音楽として機能している——これがJeff Porcaroというドラマーの本質だ。

 

 

 

🎚️ パーカッションループに合わせて叩く、という離れ業

 

 

「Africa」のレコーディングには、もう一つ特筆すべき事実がある。

 

 

曲の冒頭から最後まで流れ続けるパーカッションのループ——あのマリンバのような響きと絡み合うリズム——に対して、**Jeffは実際にそのループを聴きながらドラムを重ねていった**と、専門誌のインタビューで明かされている。

 

 

つまり彼は、固定された反復パターンに対して、生のドラムで完璧に同期させるという離れ業を行っていた。クリックトラックも今ほど一般的ではなかった時代に、機械的なループの上で人間的な「グルーヴ」を成立させる——これは単なる技術ではなく、**音楽を聴く耳の鋭さ**そのものだ。

 

 

Jeffは生前、自身の演奏についてこう語っていた——「俺は独立性(手足を別々に動かす能力)が下手だし、楽譜を読むのも苦手なんだ」。謙遜とも本音とも取れるこの言葉の裏には、誰よりも「音を聴くこと」に集中していた一人の職人の姿が見える。

 

 

 

🪘 ボ・ディドリー・ビートと、シャッフルの魔術師

 

 

Jeff Porcaroという名前を語るとき、ドラマーたちが必ず口にするのが**「ロザーナ・シャッフル」**だ。同じ『Toto IV』に収録された「Rosanna」のために作られたこのドラムパターンは、Bernard Purdieの「パーディー・シャッフル」、Led ZeppelinのJohn Bonhamが「Fool in the Rain」で見せたハーフタイムのフィール、そして**ボ・ディドリー・ビート**という3つの要素を融合させたものだ。

 

 

「Africa」自体にはこのシャッフルは使われていないが、Jeffが持っていた「複数のリズム言語を自在に組み合わせる」という発想の根っこは、この曲にもしっかりと流れている。

 

 

音楽誌のコラムニストは、Jeffの演奏についてこう評している——「彼の演奏には、優雅さと音楽性があった。複雑なアイデアを、ラジオで流れるポップソングの中にきちんと収め、ドラマーだけでなく一般のリスナーにも『心地よい』と感じさせることができた」。

 

 

技術的な凄さを、聴く人に「凄さ」として意識させない。それこそが、Jeffの最大の発明だったのかもしれない。

 

 

 

🌍 兄弟で築いた音楽一家、そして38歳での早すぎる別れ

 

 

Jeff Porcaroは、ロサンゼルスのセッションミュージシャン、Joe Porcaroの長男として1954年に生まれた。7歳でドラムを始め、父からレッスンを受けた。17歳でSonny & Cherのツアーバンドに加入し、20代の頃にはSteely Danなど数百枚のアルバムに参加する、ロサンゼルスで最も多忙なスタジオドラマーの一人になっていた。

 

 

弟のSteveはToto のキーボーディストとして、もう一人の弟Mikeはベーシストとしてバンドに参加した。3兄弟が同じステージに立つという、音楽一家ならではの光景がToto の原点にある。

 

 

しかし1992年8月、Jeffは38歳でこの世を去った。庭で殺虫剤を使用していた最中の急death——長年の心臓疾患も影響していたとされる。葬儀にはEddie Van HalenやDavid Crosbyも参列し、追悼の言葉を贈ったのは彼が「憧れの存在」と公言していたドラマー、Jim Keltnerだった。

 

 

墓碑には、彼自身が関わった楽曲「Wings of Time」の一節が刻まれている——「私たちの愛はここで終わらない。時の翼の上で、永遠に生き続ける」。

 

 

 

📱 「捨て曲」が、インターネットで最も愛された曲になるまで

 

 

「Africa」がここまで愛される理由について、広告業界のデジタル担当者はこう分析している——「'Africa'は完璧に80年代を象徴する曲だ。あの時代そのものという感じがする」。

 

 

興味深いのは、この曲が当初「ださい」「流行らない」とされていた時期があったことだ。しかし2010年代後半、Z世代がこの曲を「発見」し、瞬く間にポップカルチャーのミームへと変えていった。Weezerによるカバーが2018年にBillboardのオルタナティブチャートで1位を獲得し、TikTokでは「Africa」を使った無数の動画が作られ続けている。

 

 

なぜ、子供の頃に聴いたわけでもない世代がこの曲に惹かれるのか。Jeff Porcaro自身が生前、この曲の歌詞についてこう語っていたという——「白人の青年が、アフリカについての歌を書こうとしている。でも実際に行ったことがないから、テレビで見たものや記憶にあるものしか書けない」。

 

 

その「本物ではない、でも憧れに満ちた眼差し」こそが、ノスタルジーと既視感が入り混じる、ミーム文化と完璧に噛み合った。2020年にはBillboardチャートに38年ぶりに再エントリーし、2022年にはSpotifyで10億回再生を突破。2025年にも再びBillboard Global 200チャートに再登場するなど、その人気は今も衰えていない。

 

 

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「捨て曲だと思っていた」という曲が、世界で最もストリーミングされる80年代の楽曲の一つになった。

 

 

その土台を支えていたのは、派手な手数ではなく、**揺るがない四分音符**と、**叩かない瞬間の美しさ**を知っていた、一人のドラマーの耳だった。

 

 

Jeff Porcaroは、自分の演奏のすごさを誇示することはなかった。ただ、音楽全体が気持ちよく響くために、何が必要かを誰よりも理解していた。

 

 

彼が世を去ってから30年以上経った今も、「Africa」のグルーヴは、世界中のスピーカーから鳴り続けている。

 

 

 

 

 

 

 

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