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🇺🇲 Sound of the Sea ― 海の音に耳を澄ませながら、過去の自分へ帰っていく

 

 

2015 ,      Set in Stone - Stick Figure,

 

Songwriter : Scott Woodruff ,

 

 

 

 

 

🌊 **海から聞こえてくるのは、いつも明るい夏の音だけではない。**

 

Stick Figureの「Sound of the Sea」は、そんなことを静かに教えてくれるような一曲です。2015年のアルバム『Set in Stone』の3曲目に収録されたこの曲は、いわゆる「夏のレゲエ」という言葉から想像する陽気で開放的なサウンドとは、少し違った表情を持っています。  

レゲエ特有のゆったりとしたリズム、深く沈み込むベース、そしてDubを思わせる空間的な響き。その上にScott Woodruffの淡々とした歌声が乗ってくる。派手に感情を爆発させることはありません。それなのに、聴いていると胸の奥に、なぜか小さな寂しさが残ります。海を眺めながら、一人で遠くを見つめているような感覚です。

 

 

 

🎸 **Scott Woodruffの歌い方が、この曲の魅力を決定的なものにしています。**

 

彼のボーカルには、強く訴えかけるような熱唱とは違う魅力があります。声を張り上げず、感情を必要以上に説明もしない。ただ静かに言葉を置いていく。その淡々とした歌い方が、かえって歌詞の孤独や迷いを際立たせています。  

そして、その横でJohnny Cosmicのパーカッションがリズムを支える。ドラムやベースが前面に出て押してくるというより、音楽全体がゆっくり呼吸しているように感じられるのです。まるで波が寄せては返すように、同じ場所を何度も行き来する。その繰り返しが、この曲の「過去へ戻りたい」という感情と重なって聞こえます。

 

 

 

🌅 **この曲で描かれているのは、「家に帰りたい」という単純な願いだけではありません。**

 

歌詞に登場する「go back」という感覚は、物理的な場所へ帰ること以上に、かつて自分が感じていた安心感や、昔の自分自身へ戻りたいという気持ちとして受け取ることができます。  

人は時間が経つにつれて、環境も、人間関係も、自分自身も変わっていきます。そして、ある日ふと、「昔はもっと自然に笑っていたな」「あの頃は何も考えずに音楽を聴いていたな」と思う瞬間がある。そんな、誰にでもある記憶の感覚を、この曲は大げさに語らず、静かに描いているように思います。

 

 

 

🌴 **面白いのは、そんな少し寂しいテーマを、レゲエのリズムで歌っていることです。**

 

「Sound of the Sea」は、ゆっくり揺れるレゲエのグルーヴを持っています。だから悲しみに沈み切らない。寂しさを抱えながらも、音楽と一緒に前へ進んでいく余白が残されています。ここにStick Figureらしい魅力があります。レゲエは単なる「南国のBGM」ではなく、人生の迷いや孤独を受け止めながら、それでも明日へ向かうための音楽にもなっているのです。

 

 

 

☀️ **そして歌詞の中には、もう一つ大切なものがあります。それは「hope」です。**

 

過去を振り返り、「以前のように感じたい」と願いながらも、主人公は完全に諦めているわけではありません。明るい日を待ち、良いことがやって来ると信じ、夢を見続ける。その姿はとても静かですが、実はかなり強い。 

人生が思うように進まないとき、無理に元気を出すのではなく、「もう少しだけ待ってみよう」と思えること。それも一つの resilience、つまり立ち直る力なのだと思います。この曲の優しさは、そこにあります。

 

 

 

🎧 **そして「My guitar is all I need」という感覚も、この曲を理解するうえで印象的です。**

 

もちろん、ギターさえあれば人生の問題がすべて解決するわけではありません。でも音楽には、自分自身を取り戻すための小さな場所を作ってくれる力があります。言葉では説明できない気持ちを、ギターの音やリズムに預ける。そうすると、少しだけ呼吸が楽になる。「Sound of the Sea」は、そんな音楽そのものへの信頼も感じさせます。 

 

海を眺めながらギターを弾く。波の音を聞く。遠い記憶を思い出す。そして、また現在へ戻ってくる。そんな静かな時間が、この曲には流れています。

 

 

 

🌊 **タイトルの「Sound of the Sea」も、とても象徴的です。**

 

海の音は、同じように聞こえていても、一つとして同じ波はありません。過去と現在も、それに似ています。昔と同じ場所へ戻ることはできない。でも、記憶の中に残っている感覚をもう一度思い出すことはできる。「あの頃に戻りたい」という気持ちは、必ずしも過去へ逃げたいという意味ではないのかもしれません。過去の自分が大切にしていたものを思い出し、それを今の自分の中にもう一度取り戻す。そんな意味で考えると、この曲の「go back」は、とても前向きな言葉にも聞こえてきます。

 

 

 

 

🌅 **真夏の午後、冷房の効いた部屋でヘッドホンをつけて、この曲を聴いてみる。**

 

あるいは、夕暮れの海辺で波を眺めながら聴いてみる。そんな場面がよく似合う曲です。派手なサビで気分を一気に盛り上げるタイプではありません。むしろ、少し音量を落として、ベースとパーカッション、そしてScott Woodruffの声の間にある「空白」まで感じてほしい。 

静かに聴いていると、いつの間にか自分自身の記憶が浮かんでくるかもしれません。「あの頃に戻りたい」と思ったこと。昔好きだった場所。もう会えなくなった人。そして、かつての自分。海の音は、そうした記憶を静かに運んできます。だから「Sound of the Sea」は、単なるレゲエ・ソングではなく、**過去を振り返りながら、それでも明日を信じようとする人のための歌**なのだと思います。暑い夏の日に聴いても、どこか涼しい風を感じさせる。そんな静かな余韻を残してくれる一曲です。

 

 

 

 

 

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タイトル:スティービー・ワンダー『植物の神秘』の深淵へ〜

40年の時を経てようやく見えてきた、スティービー・ワンダーの真の姿。

ドキュメンタリー映画(未公開)のサントラ本作を、全20曲一曲ずつ丁寧に読み解いたコラムを一冊の本にまとめました。

商業的な枠を超え、地球の鼓動を音にしたようなこのアルバムの魅力を、少しでもお伝えできれば嬉しいです。

 

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著者:(Toshiro Mori)

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